
NO.1『かいじゅうたちのいるところ』
モーリス・センダック/作 神宮輝夫/訳 冨山房 |
モーリス・センダックは、現代の最も有名な絵本作家の一人です。何をもって一番とするのかはわかりませんが、評論家によっては20世紀における最もすぐれた絵本作家であるという人もいるくらいです。そしておそらくその最大の根拠は、この本の成功によるところが大であろうと思えます。
絵本紹介の第1号としてこの作品を選んだ理由も、やはりこの本の持つ魅力の人並みならぬ所以かも知れません。
この本も最初ウェザヒル出版社から出されたときは、『いるいるおばけがすんでいる』というタイトルでしたが、1975年に冨山房から神宮輝夫の訳で出されたときに現在の名前となったと聞いています。センダック自身も最初は『WHERE THE WILD HORSES ARE(野生のうまたちのいるところ)』というタイトルにもとづいた内容を描こうとしていたのですが、野生の馬が思ったように描けず、いろいろな動物におきかえた結果、THINGSにいきあたったといわれています。またアメリカで1963年に出版されたときには、多くの図書館員や親から、読者を怖がらせるという理由での批判が多かったとも聞いています。
現在では誰もが絶賛する作品でも、意外な経緯を経て現在に至ってることがわかります。この作品に登場しない母親の存在についても、最後に描かれているおいしそうな夜食の匂いのように、目には見えなくても、子どもの心の中にほのかに、しかし安心して戻ってこられる港のような大きな存在として描かれています。(T.S)
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かいじゅうたちのいるところ |
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