(社)横浜市幼稚園協会

子育て応援団
絵本の散歩道(絵本紹介のページ)

NO.27『しばてん』
       田島 征三/絵・文  偕成社

 絵本は子どものための本であるから、楽しいもの、優しいもの、美しいものでなければならないとお思いの方は少なくないのかもしれません。しかし、この本で描かれている絵は暗く、荒々しいものです。また、お話も土佐に伝わる妖怪“しばてん”の民話をモチーフに、農民一揆、裏切り、贖罪の念といった重いテーマが盛り込まれ、読者をどうしようもない後ろめたさの中に突き落としていきます。実際、この本の出版にあたっては同様の理由で子どもには不向きであるという批判が多かったと聞いています。

 人は生きていく中で様々な業を積み重ねていきます。しかたのないこととしても、生きるために食べるということが、他の生物の命を奪うということと裏腹になってしまうことを考えると、生きていくこと自体が業といえるのかもしれません。こうした過程を経て、人は自らの心の中に様々な感情を蓄積させていきます。そして、何かをきっかけとしてこれらの感情の一つが意識されることになります。この『しばてん』は、きっと人々の心の中に潜む贖罪の思いをゆり動かし、その思いで心を満たさせていくのかもしれません。
 しかし、子ども達は違っています。子ども達は自らの業などといったこととは無縁に、生きる喜びの中に浸って毎日を送っています。ですから『しばてん』は、悲しみ、怒りといった子ども達の直接的な感情と結びついて、“主人公たろう”そのものの存在を心の中に宿していくのです。

 第1回の「絵本の散歩道」でその作品を紹介している長谷川集平は、田島征三との対談の中で、この『しばてん』が、絵本に対する関心を持つきっかけになったと語っています。 田島征三によって絵本『しばてん』という形で撒かれた種は、長谷川集平の中で新たな絵本として実を結び、子どもたちの心の中に新しい種となって撒かれています。このように、この絵本は、多くの人々の心の中に、様々な芽生えとして着実に受け継がれているのです。(T・S)


しばてん


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