
NO.30『おにたのぼうし』
あまんきみこ/文 いわさきちひろ/絵 ポプラ社 |
おにたは節分の日に隠れていた物置小屋から出ていかなくてはならなくなりました。それは、その家に住んでいる男の子が豆まきを始めたからです。
恥ずかしがりやのおにたは、自分がしたことと気付かれないよう男の子のなくしたビー玉を探したり、にわか雨の時、洗濯物を茶の間になげこんだり、お父さんの靴をピカピカに磨いたこともありました。
出ていく時おにたはつぶやきます。「人間っておかしいな、おには悪いってきめているんだから、おににもいろいろあるのにな、人間にもいろいろあるみたいに」と。
お話や絵本では、おには悪者というイメージがありますが、日本の各地には、おには魔除けという言い伝えもいくつかあるようです。作者は、おにたを通じて、人は誰にも悪い所と良い所を兼ね備えているのだから、多面的にとらえなければならないことを伝えたかったのかもしれません。
絵本は文と絵が一つになって読む人に感銘を与えるのだと思いますが、いわさきちひろさんの絵が、心やさしいおにたを叙情的に描き内容を深めています。
この絵本は1969年に出版されました。作者のあまんきみこさんは好きな本を並べた書棚を持っていて、その書棚を開くと、たくさんの親友が横にいてくれるような気持ちになれるそうです。御自身の書かれた物も、「誰かの親友になることができれば嬉しい」とおっしゃっていますが、この「おにたのぼうし」もきっと読んだ人の親友になれるのではないでしょうか?
「とりつくものを見失ったおには寒い冬の海岸でおいおい泣きながらオニオコゼになると信じていました。節分の夜、入ってきたばかりの福の神に囲まれて眠りながら、広い青い海の底でおよぐ小さい無数のオニオコゼの事を思った」と作者は絵本の終わりに書いています。
おにたもオニオコゼになったのでしょうか?(ぽ) |
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おにたのぼうし |
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