(社)横浜市幼稚園協会

子育て応援団
絵本の散歩道(絵本紹介のページ)

NO.41『うさぎさんてつだってほしいの』
 シャーロット・ゾロトウ/文  モーリス・センダック/絵
                      小玉知子/訳  冨山房


 今の若者は、こと恋愛に関しては自分の思いをストレートに表現しているように感じますが、少し年配の世代にとっては、何か用事をかこつけて会う機会を作ったりなど、自分の思いをそのまま伝えることはなかなか難しかったように思います。

 この絵本のお話は、女の子が「うさぎさん」に、自分の母親の誕生日プレゼント選びの相談にのってもらうというものです。しかし、実際のところ相談は二の次で、本当は「うさぎさん」と会って、いろいろと話をしたかったのではないかと感じるのです。女の子の淡い恋心の対象が「うさぎさん」というのは少し奇妙な感じがしますが、私には、この「うさぎさん」は本物の「うさぎ」ではなく、原題の『MR.RABBIT AND THE LOVELY PRESENT』にあるように、「うさぎさん」というあだ名で呼ばれている男の人ではないかと感じます。そして、耳が長いのかどうかはわかりませんが、ふさふさとしたうさぎの胸の毛のような、おしゃれなフリルが胸元についたシャツを着ていそうな、ちょっと粋な「うさぎさん」は、小さな女の子の相談に、まんざらではないという感じで付き合っていきます。 シャーロット・ゾロトウは、多感な少女の心の内を、作品の中でみごとに表現していきます。ゾロトウは、幼い少女の愛らしさといったことよりも、豊かな感受性と、しっかりとした自我を持った一人前の人間としての少女を、他の登場人物と対等の存在として描き出していきます。この作品も、そのような一冊なのだと思えるのです。

 また、この作品において、「うさぎさん」として本物の「うさぎ」が描かれていれば、この作品は、単なるフアンタジーになってしまいます。また、反対に「うさぎさん」が人間の姿として描かれていれば、作品自体が生々しくなって、少なくとも、子どもを対象とした絵本としては成り立たなくなってしまいます。しかし、20世紀を代表する絵本作家であるセンダックは、この難しい問題を、センダックならではの表現力によって難なく解決しています。
 また、そのようなこと全てを抜きにしても、印象派の絵とも思える程に美しく描かれている湖の情景など、必見の価値があります。

 以上が私がこの絵本を見て勝手に感じていることです。皆さんはどう思われるのでしょうか。是非一度ご覧になってみて下さい。(S.T)


うさぎさんてつだってほしいの


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