
NO.46『じごくのそうべえ』
たじまゆきひこ/作・絵 童心社 |
私は子どもの頃、嘘をついたり悪いことをしたりすると、死んだときに地獄に落ちて「えん魔大王」に舌を抜かれたり、針の山を歩かされる等と、よく祖父母や両親に言われたものでした。特にお盆の時期は、地獄の蓋が開くこともあって、より神妙になりながらよく聞かされたものでした。ある程度の年齢の方であれば子どもの時に、地獄というものは、「悪いことをしたら行く所」、「とても怖い所」だから、行きたくないので極楽(天国)にいけるよう「良い子」になろうと思った経験が誰にでもあるのではないでしょうか。私にしても、その度に何度となく言われ、おかげで善悪の判断が身に付いたのかもしれません。そういう面では、年長向きの絵本なのかもしれません。
私は、「地獄」と聞くと、どうしても恐ろしいというイメージが連想されますがこの物語は、縁起が悪い、怖いという「地獄」のイメージを、四人の主人公が笑い飛ばしてくれます。それもそのはず、この物語は、演じると約一時間はかかるという上方落語屈指の大ねた「地獄八景亡者戯」が元になっているからです。
さて、絵本では、主人公の軽業師の「そうべえ」が、ふとした事から三途の川を渡ってえん魔大王に裁かれて地獄に落ち、そこで知り合った医者の「ちくあん」、山伏の「ふっかい」、歯抜き師の「しかい」の四人で地獄を旅(?)する探検(珍道中)が描かれています。四人は人呑鬼、熱湯の釜、そして針の山等へ送られますが、各々の職業が幸いして難を乗り切り、最後にはめでたく地獄から追放されて現世に戻る(生き返る)と言うお話です。言葉も、現代風にアレンジされ、関西弁の小気味よさとあいまってとてもおもしろくかんじられます。
地獄を知っている人?はいままでのイメージとは、一味違う「地獄」を「そうべえたち」と探検できたり、また、知らない人は、あまり怖がらずに地獄を知る上では楽しい一冊となるでしょう。(AND) |
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じごくのそうべえ |
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