この絵本を書店で見つけた時、題名のおもしろさと作者が韓国の人であることに興味を持ち、手に取り読んでみました。どんな内容なのだろうとページをめくると、こいぬが、石垣の隅っこにうんちをするところから話が始まります。うんちは人形のような形で表現されています。そのうんちがすずめに「うんちはきたない」と言われ、初めて自分は汚いんだと思い知らされます。つちくれにも「うんちのなかでもいちばんきったねえいぬぐそだぞ」と言われ、腹が立つやら悲しいやらで声をはりあげて泣きます。自分は何故ここにいるのか、何のためにここにいるのか、これからどうなるのか、自分はなんなのか、と自分の存在を嘆き悲しむ様子が描かれていきます。
そして、最後にはたんぽぽの花を咲かせる生命となり消えて行くのですが、自分の存在を嘆き悲しんでいたこいぬのうんちが、生命を与える大切な役割をすることを知り喜びます。本文をそのまま紹介すると「こいぬのうんちはうれしくてうれしくてうれしさのあまりたんぽぽのめをりょうてでぎゅとだきしめました」、「やさしくほほえむたんぽぽのはなのなかにはこいぬのうんちのあいがいっぱいつまっていました」と綴られています。
読み終えた時、私はこの絵本をこの世の中には(ちょっとオーバーかも知れませんが、)無くていいものや無駄なものはない、望まれないものや大切にされなくていいものなどない、必要とされないものなど何ひとつないんだということを知り、全てのものの存在が尊ばれているということを強く感じました。全てのものに生命が宿り、それぞれが何かに助けられて生き、何かを助けて生きている。それをこいぬのうんちが教えてくれた気がします。
作者のクオン・ジョンセン(1937年東京に生まれ1946年韓国に帰国)はこの作品を始め、目立たないもの、弱いものに対する愛情を多く描いています。幼稚園で子ども達にこの絵本を紹介しようと思うのですが、きっと最初は「こいぬのうんち」という題名に興味を示すかもしれません。それでも、読み終えたとき他の何かが心に残ってくれればいいなと思います。
(ぽ)
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