(社)横浜市幼稚園協会

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NO.85『ハリス・バーディックの謎』 (今月のおまけ)
     C・V・オールズバーグ /絵と文  村上春樹/訳 
                           河出書房新社

 時々はうなされたりすることがあるとしても、夢を見るのが嫌いだと言う人は少ないと思う。私自身に関しても、今晩はどんな夢が見られるかと楽しみにしている部分がある。しかし、いくら楽しい夢であっても断片的な記憶しか思い出せず、筋を辿って人に話せないことが多いのはどうにも残念に思うが、それでも何とか記憶の切れ端をつなぎ合わせて、夢の物語りを再現してみようという行為自体も結構好きなのである。

この絵本は、そんな断片的な夢の記憶に似ているように感じる。一つの物語ではなく、まったく繋がりのない14の不思議な話の一こまずつが描かれていて、見る者を困惑させてしまうかもしれないが、読者を不思議な気持ちにさせるという点では、作者の意図は十二分に達成されているように思う。

 「はじめに」と書かれたページの中で、この絵本の生まれたいきさつについて述べられているが、それをそのまま信じるかどうかは別にして、14のストーリーが、それぞれの読者の頭の中で膨らんでいくことによってのみ、この絵本が存在しえるのであろう。ハリス・バーディックによって残された謎なのか、それともオールズバーグの夢の中の一こまなのか、いずれにしても、私にとっては至極魅力的な記憶の断片となっている。オールズバーグの作品は、どれも不思議な物語であるが、その中でも群を抜いて不思議な絵本なのである。(S.T)


ハリス・バーディックの謎


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