産み落されたカエルの卵から今年もたくさんのおたまじゃくしが生まれ、元気に泳ぎ回っています。足はまだはえていませんが、カエルになって、池から飛び出していく日もそう遠くないことでしょう。何年かして、無事に池に戻ってくるカエルもいるのでしょうが、それまでにはきっと、さまざまな冒険があるのだろうと思います。
今回紹介する絵本は、そんなカエルの男の子が空を飛ぶという、ちょっとドキドキする不思議な出来事のお話です。有名な心理学者が「空を飛ぶ感覚は、性的な興奮を表わしている」と言っていたように思いますが、そう言われると、怪し気な文章や描写が、そこここに見受けられます。
「お父さんお母さんがでかけた後で」「お父さんのお酒」「一番高そうな香水」「呪文」「金色の液体」「きらめく泡」「きらきら光るへび」「空へあがる」「最後の一滴」「長い長いねむりからさめる」などなどの怪しい言葉を全部鍋に入れ、ぐつぐつと煮た後で、仕上げに大きな岩で重しをすると、こんな絵本ができあがるのかもしれません。
スタイグは、イラストレターとしてデビューしましたが、この作品に限らず、どうしてどうしてお話の面白さもとびっきりで、どれも楽しい絵本ばかりです。(S.T)
|