つい先日のことです。年長組の女の子がプンプンしながら「いくらやめてって言っても、男の子たちが追いかけてくる」と訴えてきました。保育者が、「男の子たちは、女の子がキャー
キャーいって逃げてくれるのが面白いのかも」と応えると、「そんなのどこが面白いのかしら、私なんか全然面白くない」と憤まんやる方ないといった表情です。「じゃあ、そんなつまらないことはやめなさいって言いにいきましょう」ということになりました。
幼稚園では、遊びとしての「鬼ごっこ」以外にも、さまざまな形で追いかけたり、追いかけられたりといった関係が生まれています。そして、「追いかけっこ」が楽しいものであるためには、どの場合でも、お互いに信頼関係があることが大前提です。
この絵本では、犬に吠えられ、びっくりして着物から飛び出してしまった模様の小鳥たちを、飛脚が慌てて追いかけていきます。金粉や岩絵の具をひき、絢爛豪華な舞台に仕立てられた四季折々の美しさや景観の中で「追いかけっこ」が繰り広げられていくのです。
山を登り、山を下り、はたまた山腹を突き抜け、秋の景色の中での一服も、芝居よろしく登場した黒子たちに、早々に雪景色へと追い立てられたりと、なんともナンセンスでユーモラスな「追いかけっこ」の中、雪山での出来事をきっかけに、飛脚の険しい目つきが、柔らかな眼差しにと変わり、「そら、ゆくぞ!」「そら、にげろ!」の掛け声も飛び出して、更に楽しそうな「追いかけっこ」になっていきます。
男の子たちに追いかけられ、プンプン怒っていた女の子も、他の場面では、同じ子どもたちと楽しそうに遊んでいます。仲直りのきっかけはさまざまですが、もともと関心があったり、好きでなければ追いかけてはいかないのですから。(S.T)
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