(社)横浜市幼稚園協会

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絵本の散歩道(絵本紹介のページ)

NO.128『ホームランを打ったことのない君に』
                  長谷川集平      理論社


 「止まっていた時間が動きだす」そう感じる瞬間って、一生のうちに何回かはあるのでしょうか?何十年かぶりに出席した同窓会で仲の良かった友達と再会するとか、これまた何十年かぶりに初恋の人とばったり出会ってしまった時とかにありそうですが、ちょっと月並みでしょうか。私は残念ながらまだそのように感じたことはありません。でも逆に、私の中で時を止めてしまったものがあるだろうかと考えてみると、これはぞろぞろと出てきそうで、ちょっと寂しいところです。

今回ご紹介する絵本は、久々に出会えた長谷川集平の新刊絵本です。なぜ久々になってしまったかは本のカバーに書かれていますので読んでいただくとして、書店でこの本を見つけた時に『ホームランを打ったことのない君に』というタイトルが「君のことだよ」と語りかけているようで思わず手にしてしまいました。しかし、同時に、ホームランが、「何か手が届かなかったもの」「やり残しているもの」のことを、象徴的に表現しているようにも感じました。

「あのすごさはテレビじゃわからんよ。球場で目撃しなきゃ。ホームランはあそこにいるすべての人の時間を止めてしまう。象島が苦虫をかみつぶしたような顔でダイヤモンドを一周する。そしてホームベースをふむ。ホームラン・・・彼は自分の力でホーム、つまり家を出て、くるりと世界を駆け抜けて、また家に帰ってくるんだ。自分の力で」これは、絵本の中で語られている言葉です。苦虫をかみつぶしたような顔をしているのは、ホームランを打つことが最終の目的、何かの完成ではないと知っているからなのでしょうか。主人公たちの表情が凛々しいのも、目標に向かって歩み続けているからなのでしょうか。

長谷川集平も、絵本作りの世界に戻ってきました。くるりと世界を駆け抜けたのかどうかはわかりませんが、自分の力でまたホームに帰ってきました。小説や次の絵本が出版されたとも聞きます。そして、そんな嬉しいニュースを耳にし、私の中でもそれまで錆び付いていた何かがギシギシと音を立てながらも動き始めたような気がします。(S.T)


ホームランを打ったことのない君に


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