お隣りで立派な保育が・・・。

“灯台、元、暗し”という言葉がありますが、まさにこの言葉どおりで、保育上の一つのノウハウが見つかりました。その灯台とは、広野保育所です。お粗末なことに、これに隣接している広野幼稚園は、この事実にまったく気づかないでいたのでした。その事実とは、運動会の演技種目の一つ、日本中の幼稚園・保育園で行われている“かけっこ”のスタートに関するものでした。

ある日、室内運動会を控えた保育所の乳児組が、広野幼稚園の講堂でリズムやかけっこの練習をしていました。この活動を舞台上で原稿の校正をしながら見るともなく見ていますと、“あっ”と驚いたことは、2歳児のスタートについてでありました。

それは、スタートテープを持っている二人の保育者が少しずつ後ろへ下がっていっているのです。後ろへ下がると言いますと、テープの持ち手と持ち手の幅が広がるとも受け取れますが、そうではなく、スタートテープの長さは同じで、保育者がそのテープを子ども側に近づけていくのです。

最初は、スタートテープを前にして4人ずつ走る子どもが8列並んでいました。ここで、日本各地で行われている方法を書きますと、第一走者がスタートした後は、第二走者がスタートテープのほうに近づきます。なぜなら、スタート位置は変わらないからです。この状態をより深く説明しますと、保育者が決めたスタートラインに子どもが近づくということになります。

ところが、実際に行われていたのは、子どもたちは4人並んだまま一歩も動かず、保育者の持つテープ(スタートライン)が子どものほうに近づいていたのです。イメージできましたでしょうか。

“な~るほど”と感心せざるをえません。このような子ども本位な事柄を多く集め、実行していくことが、子どもたちに寄り添った保育と言えるのではないでしょうか。

広野幼稚園の来年度の運動会では、早速、満3歳児がこの動きを取り入れたいと考えています。

皆既月食を見ながら東へ

上端部をわずかに残したお月さまを見ながら“そうだ、東へ向かって歩こう”と心に決めました。東へ向かうということは、この間ずっと月を眺めていることができるからです。

京都駅を後に、右には新幹線、左側には在来線が見える鉄道警察会館の西側のスペースに腰を下ろし、変化する月と、時を同じくします。京都駅のほん近くながら、道行く人はあまりありません。

上端部にわずかな光を残すだけになった頃には、再び歩きだしました。昔々、はやった“月がとっても青いから、遠回りして帰ろ”の歌が飛び出しますが、現実の月は赤銅色です。私にとっては、とても美しいとは表現しづらい色でした。

何本も通る在来線の上を通り、塩小路通りの手前にあるラーメン店、第一旭は20人ほどの行列でした。知る人ぞ知る人気店なのでしょうか。この中で月を眺めている方はおられないようでした。あまり、食には関心がありませんので、さっさと横を通り過ぎます。

鴨川まで来ると、東山連峰の上からかなり離れたところに月が見えます。通り過ぎる涼しい風に本格的な秋を感じながら、しばしの風流を楽しみます。

三十三間堂の裏側を通り、東大路へ向かいます。蛍光灯が明るい外灯の近くでは月はその姿を隠しますが、すぐまた、現れます。現在、京都は観光ブームですごい数の方々に来ていただいていますが、月を見ながら歩く観光をなさる方は少ないのではないでしょうか。このようなことができるのは、地元に住む人間のありがたさです。

東大路まで来ますと、京都国立博物館がもうすぐです。ここでは、平成知新館という名称の新館が、この9月に新装開店(?)しました。また、この7日からは、京都は北の高山寺の寺宝というよりも、日本の得難い絵巻物“鳥獣戯画”の全四巻が展示されています。子どもたちでも興味が持てる絵ですので、ご関心をお持ちの方はぜひお出掛けください。

皆既状態の月はしばらく変化しそうにないので、202番のバスに乗りました。