お隣りで立派な保育が・・・。

“灯台、元、暗し”という言葉がありますが、まさにこの言葉どおりで、保育上の一つのノウハウが見つかりました。その灯台とは、広野保育所です。お粗末なことに、これに隣接している広野幼稚園は、この事実にまったく気づかないでいたのでした。その事実とは、運動会の演技種目の一つ、日本中の幼稚園・保育園で行われている“かけっこ”のスタートに関するものでした。

ある日、室内運動会を控えた保育所の乳児組が、広野幼稚園の講堂でリズムやかけっこの練習をしていました。この活動を舞台上で原稿の校正をしながら見るともなく見ていますと、“あっ”と驚いたことは、2歳児のスタートについてでありました。

それは、スタートテープを持っている二人の保育者が少しずつ後ろへ下がっていっているのです。後ろへ下がると言いますと、テープの持ち手と持ち手の幅が広がるとも受け取れますが、そうではなく、スタートテープの長さは同じで、保育者がそのテープを子ども側に近づけていくのです。

最初は、スタートテープを前にして4人ずつ走る子どもが8列並んでいました。ここで、日本各地で行われている方法を書きますと、第一走者がスタートした後は、第二走者がスタートテープのほうに近づきます。なぜなら、スタート位置は変わらないからです。この状態をより深く説明しますと、保育者が決めたスタートラインに子どもが近づくということになります。

ところが、実際に行われていたのは、子どもたちは4人並んだまま一歩も動かず、保育者の持つテープ(スタートライン)が子どものほうに近づいていたのです。イメージできましたでしょうか。

“な~るほど”と感心せざるをえません。このような子ども本位な事柄を多く集め、実行していくことが、子どもたちに寄り添った保育と言えるのではないでしょうか。

広野幼稚園の来年度の運動会では、早速、満3歳児がこの動きを取り入れたいと考えています。