皆既月食を見ながら東へ

上端部をわずかに残したお月さまを見ながら“そうだ、東へ向かって歩こう”と心に決めました。東へ向かうということは、この間ずっと月を眺めていることができるからです。

京都駅を後に、右には新幹線、左側には在来線が見える鉄道警察会館の西側のスペースに腰を下ろし、変化する月と、時を同じくします。京都駅のほん近くながら、道行く人はあまりありません。

上端部にわずかな光を残すだけになった頃には、再び歩きだしました。昔々、はやった“月がとっても青いから、遠回りして帰ろ”の歌が飛び出しますが、現実の月は赤銅色です。私にとっては、とても美しいとは表現しづらい色でした。

何本も通る在来線の上を通り、塩小路通りの手前にあるラーメン店、第一旭は20人ほどの行列でした。知る人ぞ知る人気店なのでしょうか。この中で月を眺めている方はおられないようでした。あまり、食には関心がありませんので、さっさと横を通り過ぎます。

鴨川まで来ると、東山連峰の上からかなり離れたところに月が見えます。通り過ぎる涼しい風に本格的な秋を感じながら、しばしの風流を楽しみます。

三十三間堂の裏側を通り、東大路へ向かいます。蛍光灯が明るい外灯の近くでは月はその姿を隠しますが、すぐまた、現れます。現在、京都は観光ブームですごい数の方々に来ていただいていますが、月を見ながら歩く観光をなさる方は少ないのではないでしょうか。このようなことができるのは、地元に住む人間のありがたさです。

東大路まで来ますと、京都国立博物館がもうすぐです。ここでは、平成知新館という名称の新館が、この9月に新装開店(?)しました。また、この7日からは、京都は北の高山寺の寺宝というよりも、日本の得難い絵巻物“鳥獣戯画”の全四巻が展示されています。子どもたちでも興味が持てる絵ですので、ご関心をお持ちの方はぜひお出掛けください。

皆既状態の月はしばらく変化しそうにないので、202番のバスに乗りました。